【INTERVIEW】デスクトップOSのあるべき姿を追求した──Mac OS X v10.4“Tiger”の製品担当に訊く
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2005年05月17日
メタデータ検索機能の“Spotlight”など、200以上の新機能を搭載して4月29日に登場した『Mac OS X v10.4“Tiger”』。その製品担当者が来日した。“デスクトップOSのあるべき姿を追求した”というTigerはどんなOSか? 米アップルコンピュータ社シニアプロダクトラインマネージャー Mac OS XのChris Bourdon氏にお話を伺った。
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来日した米アップルコンピュータ社のChris Bourdon氏 |
[編集部]
日本では4月29日に発売となった『Mac OS X v10.4“Tiger”』(以下Tiger)ですが、その手ごたえはいかがでしょうか?
[Bourdon]
素晴らしい反響をいただいています。29日には銀座のアップルストアでもイベントがあり、1000人が訪れてくれました。
[編集部]
『Mac OS X v10.3“Panther”』(以下Panther)を上回る成果を上げられそうですか?
[Bourdon]
PantherはMac OS史上、最も成功したOSとなりました。Tigerのセールスを予想するのは難しいですが、さらなる成功を期待しています。
高速なインデックス更新は、OSに統合したからできた
[編集部]
Tigerで最もアピールしたい機能はやはり“Spotlight”でしょうか?
[Bourdon]
Spotlightは、デスクトップテクノロジーにおいて最も重要な技術です。コンピューターの中に格納されたすべてのファイルをとても素早く見つけ出すことができます。特にパワフルな技術ではありませんが、ユーザーの使い方に大きな変化が出てくるのではないかと思います。
機能はご存知のようにシステムのメニューから簡単に呼び出すことができます。待ち合わせの情報や電子メール、PDF、画像、オフィス文書など、コンピューターに保存されたあらゆる情報をこのメニューから呼び出すことができるわけです。
このSpotlightの技術はMac OS X全体を通して使われており、例えば“スマートフォルダ”という仕組みを利用して情報を整理することもできます。これまでは大量のドキュメントの管理にパワーユーザーでさえも頭を抱えていたわけですが、Spotlightとスマートフォルダを利用することで、効果的に文書を管理できるようになるでしょう。
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Spotlightの機能はファイル検索以外にも応用されている、画面はシステム環境設定で検索を行なったところ。Windowsから“Switch”したユーザーにも使いやすいよう“壁紙”(Mac OSではデスクトップピクチャ)など、Windowsの用語でも検索できる |
[編集部]
メタデータ検索については、米マイクロソフト社も“WinFS”という仕組みをアナウンスしています。しかし、実現には時間がかかりそうです。Spotlightを早期に実現できた理由を聞かせてください。
[Bourdon]
われわれは、既存の技術をベースとしたため、技術的には非常にシンプルな方法で“デスクトップ検索”を実現することができました。“HFS+”という優れたファイルシステムに、2つのインデックス(ファイルの内容とメタデータ)を追加したのです。焦点を当てたのは“技術をユーザーにどう届けるか”という部分で、カーネルからファイルシステム、アプリケーションに至る、OSのあらゆるレイヤーでデスクトップサーチを利用できるようにしています。この技術は18ヵ月で実現できました。
[編集部]
メタデータを管理する仕組みはHFS+が持っていたものでしょうか?
[Bourdon]
メタデータは専用のインデックスに保管しています。これは特別にカスタマイズしたデータベースです。これをファイルシステムの上に置きました。
[編集部]
デモンストレーションでは、動的にインデックスが更新されていく様子が示されました。驚いたのは、一般的なデスクトップサーチに比べ、負荷が大変低い点です。
[Bourdon]
パフォーマンスを良好に保つために、ファイルシステムに変更が加わった際に、動的にインデックスが更新されていく手法を採用しました。ファイルの追加、更新、削除が行なわれた際には、ファイルシステムがSpotlightに“変更が加えられた”と通知する仕組みになっています。その通知を受けたSpotlightはインデックスの更新を行ないます。
これはMSNやGoogleのデスクトップサーチとは異なるメカニズムです。Spotlight以外の方法では、システムに高い負荷を掛けるとともに、インデックスに反映されない部分も出てきてしまいます。
[編集部]
OSに統合されたメリットが出ているというわけですね。
[Bourdon]
そのとおりです。SpotlightをOSに統合したことで、アプリケーションからだけではなく、システムメニューやFinderからも機能を呼び出せるようになりました。注目してほしいのは「こうあってほしい」とユーザーが期待する方法で、検索機能を利用できるようにした点です。
[編集部]
スマートフォルダによって、ファイルの保存場所に頭を悩まさなくなったというのは確かに画期的です。
[Bourdon]
サードパーティーがSpotlightを利用する際には2つの方法が考えられます。1つはアプリケーションの中で、Finderと同等の検索機能を実現できるという点です。また、プラグインを作成することもできます。プラグインの追加で、固有のファイル形式の検索も可能となります。現在提供されているプラグインの一覧はウェブページで公開されています(※1)。
※1 国内では(株)エルゴソフトがEGWORD用のプラグインをTigerの発売と同時に提供し始めた
[編集部]
“ウィジェット”と呼ばれるデスクアクセサリーを手軽に出し入れできる“Dashboard”が追加されましたが。
[Bourdon]
ウィジェットはウェブの技術をベースとしています。JavaScriptやHTML、CSSなどで記述できるほか、プラグインの技術も利用できるため、音楽やビデオを再生するといった“高度な”機能も実現できます。非常に作りやすくなっており、ウェブページを作ることができる技術があれば、基本的なウィジェットを作れると考えていいでしょう。ウィジェットを作る際に最も良いリソースはデベロッパーサイトにある、いくつかのサンプルコードになるでしょう。
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簡単に出し入れできるデスクアクセサリーの“ウィジェット”。すでに120種類を超えるウィジェットが公開されている |
[編集部]
削除方法は、特に用意されていないようですが。
[Bourdon]
ほかのファイルを削除するのと同じようにシンプルです。ウィジェット自体をそのまま削除するだけです。ウィジェットを記述したHTMLやJavaScript、リソースファイル、プラグインなどもパッケージ化され、ひとつのアイコンで管理されています。
[編集部]
“Dashboard”では自由度の高いデスクアクセサリー(ウィジェット)を作成することが可能ですが、悪意のあるウィジェットの作成を危惧する声も一部にあります。この点に関してはどうお考えですか?
[Bourdon]
ウェブブラウザーの『Safari RSS』には、ウィジェットを簡単にダウンロードし、自動的にインストールする機能があります。できるだけシンプルで誰もが簡単に使えるようにしたいと思っています。(誤解されやすいのですが)ウィジェットをダウンロードしただけで自動的に実行されるわけではありません。最初はあくまでもユーザー自身がウィジェットを起動する必要があります。
[編集部]
ダウンロードしたウィジェットに危険性があるものかどうかを判別する方法はシステム側に用意されてはいないのでしょうか?
[Bourdon]
一番いい方法は、ウィジェットをダウンロードする際に、“どんな作者”からダウンロードするのかを確認することでしょうね。新しいプログラムを導入する際に危険性があるのは、どんなOS、どんなソフトウェアでも同じことでしょう。
[編集部]
200種類を超える新機能の中では、個人的に“Xgrid”に注目しています。対応するアプリケーションなどはどうなっているのでしょうか?
[Bourdon]
Xgridは、科学技術関連の開発者向けに設計しています。ネットワークにつながったすべてのMacintoshのCPUを使用して複雑な計算を行なうのが目的です。分散処理は、科学技術演算で用いられることが多いですが、これまで複数のマシンで処理を分散するプログラムを作成するために莫大な時間を取られていました。Xgridを使うことによって“分散処理を実現する”という技術面での負担を減らし、“問題を解決する”という行為に集中することができるようになります。
[編集部]
分散処理は、研究室以外でも需要がありそうです。3Dグラフィックスや音楽制作など、応用範囲は広がっていきそうでしょうか?
[Bourdon]
ありうるでしょう。おそらくあなたはレンダリングや圧縮を行なうアプリケーションを想定していると思います。『Final Cut Studio』は、今のところXgridには対応してはいませんが、(高いマシンのスペックを要求される)ビデオ編集スタジオといったエリアに応用される可能性は十分にあります。
[編集部]
デスクトップ上で稼動しているMac miniなどを複数つなげて、より高速な処理を行なわせるといったことも考えられますが。
[Bourdon]
Xgridを求める人は、おそらく“最も高速である”点を求めることになるでしょう。彼らはコスト性能を重視するはずです。ファイバーチャネルなどを利用して、5台、10台……100台といったマシンをつないで高速な処理を行なわせることになるでしょう。例えば、バージニア大学では1000台のPowerMac G5をつないで、極めて低価格に、スーパーコンピューターに匹敵する性能を実現しています。
[編集部]
デスクトップ版と同時にリリースされた、サーバー版のTigerにも興味を持っています。価格も安価ですし、標準でWindowsやUNIXのマシンをクライアントとできる点も魅力的です。導入は進んでいるのでしょうか?
[Bourdon]
いま最も注力しているのは映像プロダクションで『Xserve G5』と『Xserve RAID』、『Xsan』を使って、高容量のストレージと高性能を実現することです。映像編集環境の『Final Cut Studio』と合わせることで、テレビや映画のプロダクション向けに、導入コストも安く、大変よいソリューションを提供できると思っています。
[編集部]
最後に日本のユーザーにメッセージをいただけないでしょうか。
[Bourdon]
私はTigerは、現在入手できるOSの中では、最も能力が高く、先進的なOSであると自負しています。SpotlightやDashboard以外にも、プログラミングなしで定型の作業を簡単に実行できる『Automator』や、RSSに対応した『Safari RSS』、最大3人でビデオ会議が行なえる『iChat』、H.265コーデックに対応した『QuickTime 7』などさまざまな機能が搭載されています。
[編集部]
Automatorは、面倒な処理はパソコンに任せたいという要求を満たしてくれるものですね。
[Bourdon]
そのとおりです。Mac OS XにはAppleScriptもあり、プログラミングができる人はこれを使ってほしいのですが、プログラミングの知識がない人でもAutomaterを使うことでワークフローを自動化できます。Automaterという技術によってプログラミングをせずに繰り返しや複雑な作業の自動化が行なえます。
[編集部]
Tigerは一言で表現するとどんなOSですか。
[Bourdon]
“デスクトップコンピューターがするべきこと”を改めて定義し直したOSではないかと思います。Spotlightを始めとした機能によってコンピュータの使い方が変える、そんな力を持ったOSだと思います。
[編集部]
“OSのあるべき姿”を実現したということですね。
[Bourdon]
そのとおりです。
(編集部 小林久)
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