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日産自動車に聞く、車載機器の今後と可能性

Printable Version 2005年10月13日

デジタルオーディオプレーヤー(DAP)は、携帯から車載へとその範囲を広げつつある。

iPodの車載について発表するジョブズ氏
9月のプレスイベントで車載システムのiPod対応に関して説明するスティーブ・ジョブズ氏

米アップルコンピューターのCEOスティーブ・ジョブズ氏は、9月に米国で行なわれたプレスイベントで「2005年に米国で出荷される自動車の30%はiPod対応になる」と発言した。iPodと直接接続できる端子を持ち、選曲操作などをタッチパネルなどで簡単に行なえる製品は、昨年6月にBMWグループとアップルが米国向けに投入したカーオーディオシステムが皮切りとなった。その後も対応は進んでおり、国内でもクラリオン(株)、パイオニア(株)、(株)ケンウッドなどのカーオーディオメーカーがiPod対応製品を投入している。

これらの製品は、FMトランスミッターやカセットアダプターなどを利用した方法と比べて、よりシームレスにiPodと連携できるのが特徴だ。新たな動きとしては、自動車メーカーが自社の純正オプションにiPod対応システムを加え始めた点が挙げられる。MDやCDに続く新しい選択肢として、DAPの存在感は高まりつつある。

編集部では、7月にiPod対応のカーナビゲーションシステム『HC705-A』を投入するなど、積極的にiPod対応に取り組んでいる日産自動車(株)を取材した。同社マーケティング本部マーケティングダイレクターオフィスマーケティング・ダイレクターの中澤千代子(なかざわ ちよこ)氏に、iPodを始めとした車載システムの今後を聞いた。



アップルとは広範な協業を計画


マーケティング担当の中澤氏
日産自動車(株)でマーケティング・ダイレクターを務める中澤千代子氏

[編集部] これまでのiPodに対する取り組みについて聞かせてください。

[中澤] デジタルオーディオプレーヤーの市場は着実に伸びており、自動車で楽しみたいという需要が高まっています。iPodに関しては、今年1月に開催された“Macworld 2005”で、アップル社と積極的なコラボレーションを展開していく旨をアナウンスしています。もともとアップル社からアプローチがあったもので、「日産車には“イノベーティブ”(革新的な)イメージがあり、iPodのイメージに合う、ぜひ協業したい」という提案を受けました。単に商品を出すだけでなく、イメージビルディングや顧客データベースの共有なども含めた展開を考えています。

[編集部] デジタルオーディオプレーヤーには多くの製品がありますが、その中でiPodを選んだ理由について教えてください。

[中澤] アップル社の発表では、iPodの米国シェアは2004年が35〜40%。2005年の第1四半期には65%と急拡大しています。国内ではいくつかのデータがありますが少なくとも20%、最近の調査では短期的に60%のシェアを取ったというものもあります。このシェアの高さはもちろんですが、“iPod”という名前自体がすでにカテゴリーの代名詞となっており、外せない部分があると思います。

[編集部] 純正オプションとして用意された『HC705-A』を搭載可能な車種はどうなっていますか。

[中澤] “コンパクト”“ユーティリティー”と呼ばれる小型の車種とミニバン、商用車の一部となっています。製品の提供形態の関係で、ハイエンド車への展開は見送っています。マーチやキューブといった製品は20〜30代の若い層の人気が高く、彼らにアピールできるものを出そうという考えがありました。割合としては乗用車では34車種中11車種、約1/3が今回の製品を搭載できる形になります。



カーナビの画面
『HC705-A』の操作画面。iPodの選曲操作などを、タッチパネルを使って行なえる

[編集部] 製品企画という観点で、工夫されたのはどういった点でしょうか。

[中澤] 早いタイミングで出すことがひとつのポイントだったため、製品としては他社が実現している領域と大きくは変わらないというのが正直なところです。現状では、日産としてのオリジナリティーが十分に発揮されているとは言えませんが、そこは順次対応していくことになると思います。

[編集部] 今後強化していくポイントを具体的に教えてください。

[中澤] ひとつは操作性の改良ですね。車の安全を阻害することなくどこまで機能性を高めることができるかが、大きな課題です。対応する車種も増やしていかなければなりません。現状では工場出荷後にディーラーが装着できる“ディーラーオプション”での提供ですが、今後は工場装着の“ライン対応”も進めていく必要があると考えています。フーガのようなハイエンド車ではサウンドシステムもライン対応となっていますが、そのぶん厳しい基準をクリアーする必要があり、開発も難しくなります。





リビングのエンターテインメントを車内にどこまで持ち込めるか?

マーチ
iPod対応カーナビを搭載可能な車種のひとつ『マーチ』

[編集部] iPodの市場はいままさに広がっていますが、こういった新しいデバイスは今後も次々と投入されてくると思います。その対応方針に関してどのように考えていらっしゃいますか?

[中澤] 自動車の空間は限られていますが、無限の機会(opportunity)が秘められています。家庭のリビングで実現されているエンターテインメントをどこまで車内に持ち込むことができるかがチャレンジだと考えています。

[編集部] “携帯電話機の開発期間は3ヵ月”と言われるように、デジタル機器の陳腐化は非常に速い。一方で、自動車は一度購入したら、ある程度長期──10年程度は利用すると思います。こういった製品寿命の不一致に関してはどう考えられていますか。

[中澤] ディーラーオプションを選択した理由のひとつに、マーケットニーズに迅速に対応できる点がありました。また、自動車の開発期間を短縮する努力も行なっています。これまで自動車の開発には5年かかると言われていましたが、その期間はいまでは大幅に短縮されています。その理由のひとつには、3D CADシステムの進化が挙げられます。従来の開発方法では設計時に、粘土を利用した“クレーモデル”の試作、テスト、設計の見直しといった工程を何度も繰り返す必要がありましたが、現在ではこういった工程を経ずに、ほぼ最終に近い状態までコンピューター上で扱えるようになっています。1例を挙げると、今年1月に発表した『NOTE』の新モデルは、自動車のデザイン決定(モデル凍結)から生産開始までの期間が従来の半分となる10.5ヵ月に開発期間を短縮できました。



NISSAN CARWINGS
NISSAN CARWINGSのウェブサイト

[編集部] 車載システムに関して、今後の青写真のようなものがあれば、聞かせていただきたいのですが。

[中澤] 現在、当社が力を入れているサービスに“NISSAN CARWINGS”というものがあります。CARWINGSはライン対応のナビシステムで、特徴はオペレーターの音声によるサービスが利用できる点です。ナビに携帯電話機を接続し、センターに電話をかけることで、混雑状況や最適な経路のアドバイス、近くのランドマークなど、さまざまな情報が24時間いつでも入手できます。

CARWINGSにはウェブサービスも用意されていて、気象情報やエンターテインメント情報なども確認できます。こうした“テレマティクス”の分野はトヨタやホンダも取り組んでいますが、単なるドライバー向けの情報サービスではなく、CRM(Customer Relation Management)の一環としてマーケティング活動や顧客満足度の向上のために役立てられる点も特徴です。例えば、自動車の走行履歴を収集して、保守サービスに利用できます。「この車両は1万km走ったからそろそろ点検が必要です」とユーザーに通知する、そんなイメージを考えています。

[編集部] 近くにあるレストランを紹介するなど、位置情報と絡めたサービスや、ドライバーのニーズにあった広告の提供など異業種との協業も可能になりそうですね。

[中澤] GPS情報を利用して、海沿いを走っている際にはそれにあった音楽をかけるといった応用もできるでしょう。エンターテインメントに+αの要素を付加した“車の中だけの新しいサービス”が提供できるわけです。また「この乗り方であればこの保険が最適」といった具合に、ユーザーひとりひとりに最適なサービスの提案も行なえます。顧客満足度のアップにもつながっていくでしょう。これらは既存の顧客をリテンションする(引き止める)ことにつながり、ビジネス面でも高い効率が期待できます。

車内のエンターテインメントとして音楽はなくなることはないでしょう。しかし、提供の形は変わっていきます。大きな流れとしてデジタル化があるのは確実ですが、さまざまな形態が生まれつつある。「車だから……」と制限するのではなく、世間一般で普及しつつある選択肢は可能な限り提供できるようにしていきたいと考えています。





(編集部 小林久)





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