システム設計者が語る、フジテレビ『西遊記』がMacを導入したワケ
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2006年06月09日
映画“ローレライ”や映画“男たちの大和/YAMATO”など、ここ数年、映画/ビデオ業界では作品製作に、アップルコンピュータ(株)のハード/ソフトを導入するケースが増えてきている。2006年1月から3月まで放送されたフジテレビ系列のドラマ“西遊記”も、アップル製品でCGを製作した作品のひとつだ。
そんな西遊記のCG制作グループでシステムを担当した(株)フジテレビジョンの遠山健太郎氏が、先月末に開催された“Apple Post NAB2006 TOKYO”のセミナーに登場し、導入理由やビデオ制作における利用形態などを語った。以下、講演内容のまとめをお届けしよう。
Xserveでレンダーファームやプレビュー用ディスクを構築
今回、西遊記の制作にあたって導入したアップル製品は、ハードでは『Power Mac G5』『Xserve G5』『Xserve RAID』『PowerBook G4』など。ソフトでは統合ビデオ制作ソフト『Final Cut Studio』、ビデオ合成ソフト『Shake 4(シェーク)』、ストレージエリアネットワークを実現する『Xsan(エックスサン)』といった製品です。
システム構成で見ると、CG制作を手掛ける美術センターでは、Shakeの作業用マシンとして4台のPower Mac G5、Xsanに使う1台のXserve G5と2台のXserve RAID、レンダーファーム(レンダリングサーバーの集合)用に10台のXserve G5を使っています。加えて、撮影現場にはFinal Cut Pro HDをインストールした17インチPowerBook G4を導入しました。
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美術センターのシステム構成 |
アップル製品以外では、マイクロソフト(株)の『Windows Server 2003』を使ったファイルサーバー、オートデスク(株)の『Maya 6.5(マヤ)』『3ds max』やアドビシステムズ(株)の『Adobe After Effects 6.5』などを組み込んだWindows機、CG合成に使うノンリニア編集システム『Discreet flame(ディスクリートフレーム)』なども用意しています。
Macを選んだ理由は、まずメンテナンスに手間がかからないということ。例えばPower Mac G5はすぐに内部にアクセスできる。Mac OS Xは動作が安定しているし、システムの構造がわかりやすいから、トラブルが起こっても原因の切り分けが楽です。
加えてMacはMac OS Xが64ビット化されているため大量のメモリーを積んで使えるし、“非圧縮HD 10bit RGB 4:4:4”といったハイエンドフォーマットにも対応している。何よりコストパフォーマンスが高いというのも決め手でした。
ShakeとDiscreet flameをCG合成に利用
西遊記のCGは約25人ほどで制作していて、2005年5月よりシステム設計を始めています。まず予想されたのが、番組の規模がかなり大きいので、自社のビデオ編集システムで作業をまかなえないということ。特に実際の映像とCGの合成が多く、導入されていた2台のDiscreet flameだけでは間に合わない。
機材の追加は必要でしたが、同時にコストを抑えることも課題だったため、高価なDiscreet flameではなく、ローエンドのビデオ合成システムで台数を用意するのが望ましかった。そこでまず最初に試したのがアップルのShakeです。
動きが速かったり色指定が難しい素材でもきちんとマスクできるか、インターレースの素材も扱えるかといったテストを3週間ほど行ない、最終的に“問題なし”と判断して導入しました。Shakeはインターフェースが整理されているため、どういう挙動のソフトかを多少理解できればスムーズに使えます。
HD映像のプレビューを実現するXsan
Xsanはデータストレージ用という印象を持っている人もいるかもしれませんが、われわれはハイビジョン映像をプレビューするために用意しました。編集中のハイビジョン映像はデータ容量が膨大になり、ローカルHDDでは快適にプレビューできない。とはいえShakeの作業に使う4台のPower Mac G5すべてにRAIDを用意すると、場所をとるしコストもかかる。全体的にコストを下げつつ、場所も節約するためにXsanを選んでいます。
ただし、今回はあくまでもプレビュー用なので、ハードウェアは1台のXserve G5と各7TBのHDDを備えた2台のXserve RAIDという最小構成です。
レンダーファームはWindowsからも利用
レンダーファーム用にセッティングした10台のXserve G5は、MacからだけでなくWindowsからもデータを投げてビデオの分散レンダリングを行なっています。
各Xserve G5にインストールされているソフトは、(株)ビジュアル・プロセッシング・ジャパン(VPJ)の分散レンダーキュー管理ソフト『rush(ラッシュ)』に加えて、ShakeとMaya、米GenArts社のビデオエフェクト『Sapphire Plug-ins(サファイア プラグイン)』などになります。
Xserve G5は、1台あたりでも数を揃えても安価です。マシンの数が増えればそのぶん高速化される。今回は10台用意することで、結果的にハイエンド製品を超える性能を発揮できたし、コストダウンにもつながりました。
PowerBook G4で効率的なワークフローを実現
撮影現場の17インチPowerBook G4は、全体の作業効率を上げるのにひと役買っています。例えば、クロマキー合成用などに撮影したハイビジョン映像を、DVコンバーターやDVデッキにつないでSD(標準解像度)に変換しながらPowerBook G4に保存。撮影の合間にFinal Cut Proを使って、膨大なシーンの中から使う部分のみ切り出して粗編集を行ないます。
この編集結果をQuickTimeムービーとして書き出し、先に美術センターに渡しておきます。美術センター側は、最終的に編集に使うハイビジョン映像が届く前に、どういう素材があって、どのシーンを使うのかという情報を得られるわけです。
PowerBook G4によるこの粗編集システムはトラブルが少なく、私はセッティングした初日だけ立ち会いましたが、その後5カ月くらい運用しても問題なかった。だから高い信頼をよせています。
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撮影現場のシステム構成 |
Xsanの整備などが今後の目標
西遊記は本放送が終わって、4月よりバックアップのアーカイブ作業を始めています。今後ですが、Windows環境で使っていたMayaをMac環境に移行したいと考えています。
Xsanの環境整備も課題です。今回はあくまでshakeのプレビュー用として導入したため、メタデータコントローラーやXserve RAIDが足りない。通常運用レベルに上げて、編集マシンのローカルHDDをXsanでカバーし、アクセス速度の速い環境を提供していきたいです。
(編集部 広田稔)
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