【遠藤 諭の快適iPod life(Vol.2)】『iPod shuffle』――真の目的は音楽における精神的ラクチン主義
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2005年1月19日
またしても! 中枢神経にスッとくる商品が出てしまった。『iPod shuffle』が出て、いままでのiPodでは(iPod miniでも!)大きいと思っていたらしい庶務の女性らが、大騒ぎしている。一体ナニが彼女らをそうさせるのか? その秘密にちょっぴり触れてみることにしよう。
「アップルがやることは、パソコンの進化という意味ではすべて正しい」……という“仮説”を、私はあるとき立てたことがある。
この業界を少しばかり長く見ている人なら、パソコンで動画を再生するQuickTimeや、文字をキレイに表現するTrueTypeや、高速の通信ケーブルであるFireWireや、無線を早々と実現したAirPortの取り組みも、もっといえば、iMacも、自分じゃ撤退してしまったが、いまもデルやHPがノキアが真面目に取り組んでいるPDAも、たしかに正しかったよねぇと感じると思う。
というよりも、実際に正しいかどうかは別として、「アップルがやることはすべて正しい」とすると、経験的に、この業界のことは分かりやすい。少し先のことが見えてくるのである。その例が、またしても『iPod』であり、『iPod shuffle』だといえば、話の通りはいいように見える。
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中枢神経にスッとくる商品の『iPod shuffle』……グリーンのパッケージに入っている |
ところがだ、あるところで「アップルのやることはすべて正しい」というこの仮説を書いたら、月刊アスキーで長くアップル担当だったFくんに「そうでもないでしょう」と指摘された。Fくんによれば、アップルを創業者の1人で現CEOのジョブズと言い換えるなら、それは必ずしも当てはまらない。アップルが、いまあげた先進的な技術に積極的に取り組んだのは、ジョブズ不在の11年間だというのである。そのときの旬な技術をポンポンと放り込んでパッケージングして見せるのがジョブズの身上だというのである。Apple IIIも、Macintoshも、NeXTも、iMacも歴史的なコンピュータにほかならないが、そう考えると彼の指摘が当てはまる。Fくんによれば、アップルにジョブズが戻ってまずやったのは、リンゴの色をグレーの単色にして、コーポレートフォントをGaramondからMyriadに変えたことだそうだ。そういうことの意味を理解していることが凄いのかもしれない。そして、iPod shuffleこそ、それが最も当てはまる象徴的な製品なのかもしれない。
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iPod shuffleの正しい視聴スタイルは、首にかけて聴く。白くて四角い“白いモノリス”をぶら下げているような雰囲気となる |
全世界のハードディスク型音楽プレイヤーの市場で、アップルは84%のシェアを握っているそうだ。その結果、米国でのMacintoshの市場シェアもあがってきているとも聞く。
まさに魔法というべきだろう、iPodという音楽が何千曲も入る器を手にしたことで、自分のライブラリを回し聴きしたりDJしたりするような“iParty”なんて文化が作られたりしてしまう。
それじゃ、今回のiPod shuffleは、どうなのか? それは小さくてデザインがいいから騒がれているのか? 液晶もなくLEDの表示だけで音楽と付き合おうという発想が受けているのか? そのいずれも当たっているのかもしれないが、実は、どれも外れていても構わない。
要するに、iPod shuffleは、新しい音楽とのつきあい方を“アイコン化”する働きがある。白いインナーイヤー型のヘッドフォホンをしてしているだけではなくて、首の前からぶら下げて示してくださいというわけだ。
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ブルーのカードは、日本でも今春サービスが開始されるといわれるiTunes Music Storeの米国プリペイドカード |
さて、あまりに理屈だけコネていてもこの製品の魅力は伝わらない。もっとも、iPod shuffleの機能についてはすでにあちこちで紹介されているから、ここで1つ1つ詳しく説明する必要はないはずだが……。
とはいえ、ポイントを整理すると、まず、価格が安い。今回、同時にサンフランシスコで発表されたMac miniもそうだし、iMac登場時もそうだった。「えっ」というほど安い。これが、デジタルの王道というものでしょう。次に、使い勝手を徹底的にシンプル化してある。USBコネクタに装着するだけで、充電と音楽やデータの転送ができる。そして、文字どおり「シャッフル」という部分である。
シリコン型の音楽プレイヤーは、どの曲とどの曲を入れてという、ちょうど旅行カバンに何を入れて出かけるかというような問題をはらんでいた。それを、逆手に取ったのがiPod shuffleのシャッフルで、曲を選ぶのに使う精神的負担からユーザーを解放する。しかも、iTunesのメニューを選ぶだけで“よく聴く曲だけを持ち歩く”のか“PCのハードディスクに埋もれていた曲を掘り起こす”のか、どちらも可能。
欲をいえば、中身が2つに分かれていて、その両方を持ち歩けるようになっていたら楽しかった。それとも、このサイズなら2個買いますか?
(パソコン評論家:遠藤 諭)
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