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【短期連載】アップル&ソフトバンク提携の可能性を探る――第1回 iTMS進出が促進する“着うたフル”の値下げ

Printable Version 2006年05月17日

一部報道機関は13日、「米アップルコンピュータ社とソフトバンク(株)が日本における携帯電話事業で提携し、iPodの機能を内蔵した端末を共同開発して年内に発表する」と報じた。このニュースについて、ソフトバンクは15日にプレスリリースで「報道機関による憶測記事。報道された内容は当社で機関決定したものではない」と否定している。また、アップルはコメントを出さずに静観している状況だ。

果たしてアップルとソフトバンクの提携話は本当なのだろうか。また、仮にすでに提携が実現していて、今後アップルのプロダクトやサービスが日本の携帯電話業界で展開された場合、どういった影響を及ぼすのだろう。本連載では3回に渡り、ジャーナリストやアナリストにその可能性を探ってもらう。


第1回 津田大介氏
インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するライター/ITジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。音楽配信関連の話題を扱うウェブサイト“音楽配信メモ”の管理人としても知られる。



ROKR
2005年9月に発表された米モトローラ社のiTunesを搭載した携帯電話『ROKR』

日本はパソコンにおける音楽配信よりも、携帯電話でフルコーラスの楽曲をダウンロードできる“着うたフル”が高い人気を誇っている。海外で発売されたiTunes携帯『ROKR』のようにパソコン経由で楽曲を転送できるというだけではインパクトがない。

日本経済新聞の報道では、2007年には「携帯電話版のiTunes Music Store(iTMS)をアップルが立ち上げる方針」とされている。この内容が事実なら、ソフトバンクとアップルは携帯電話のiTMSで購入した楽曲にも“Fairplay”*1ベースのDRM(デジタル著作権管理)を適用し、楽曲をパソコンに転送して、CD-Rなどにコピーできるようにしたいと思っているはずだ。



ドコモの2006年夏モデルで、富士通(株)が手掛ける『F902iS』。著作権保護されたWMAの音楽ファイルを再生できるのが特徴

着うたフルでは、すでにKDDI(株)の“au”が支配的な立場にあるが、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ(ドコモ)も2006年の夏モデルから着うたフル対応を強化した。しかし、どちらも携帯電話内だけで完結するサービスであり、パソコンに転送できないだけでなく、1曲の価格も通常のパソコン向け音楽配信サービスより高く設定されている。

アップルが携帯電話版のiTMSを提供し、ソフトバンクの端末から直接アクセスして購入できる仕組みを作るということは、今まで切り分けられていたパソコンと携帯電話の音楽配信を融合させるという意味を持つ。音楽配信というひとつのジャンル内に起こった“二重価格”を統一し、携帯電話向け音楽配信に“価格破壊”をもたらすのだ。

当然のことながら着うたフルで高い利益を得ているレコード会社は反発するだろうが、携帯電話向けの音楽配信が馬鹿にならない利益を出すようになってきた現状で、明らかにユーザーニーズが高そうなサービスに背を向けるのは得策でないと考えるレコード会社があっても不思議ではない。特に現在iTMSと契約しているメジャーのレコード会社は、条件次第で楽曲を出してくる可能性は十分にある。

また、iTMSが携帯電話に“進出”した結果、携帯電話向け音楽配信の販売価格が安くなることは、実はライバルであるau、ドコモにとっても歓迎すべき状況だ。従来の着うたフルはレコード会社に価格決定権があり、とにかく高価に設定されていた。携帯電話事業者はパケット代が定額化された今、コンテンツ販売の手数料で儲けることが急務になっている。その意味で楽曲の価格を安くして、トランザクション(取引件数)を増やすことには大きな意味がある。

日本の携帯電話向けコンテンツ市場は世界的に見ても進んでおり、今後の事業展開が世界的なモデルケースになる可能性もある。今年10月の番号ポータビリティー開始を前にさまざまな仕掛けがソフトバンクから発表されるだろうし、迎え撃つドコモやauも“音楽”をキーにしたさまざまなサービスを展開してくるだろう。



*1 Fairplay
iTMSなどで使用されているアップルのデジタル著作権管理技術


第2回はMac/インターネット/携帯電話などを中心に執筆活動を行なっているITジャーナリストの林 信行氏に、第3回は市場調査会社のIDC Japan(株)にて携帯電話の分野を担当するコミュニケーションズシニアマーケットアナリストの木村融人氏を予定。





(編集部 広田稔)





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