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【短期連載】アップル&ソフトバンク提携の可能性を探る――第2回 既成の枠にとらわれない新サービスを期待

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一部報道機関は13日、「米アップルコンピュータ社とソフトバンク(株)が日本における携帯電話事業で提携する」と報じた。第1回の津田大介氏に次いで、第2回は林 信行氏に両社提携の可能性を語ってもらう。

第2回 林 信行
Macを中心に、パソコン/インターネット/携帯電話などのジャンルを広く取材するITジャーナリスト。インターネット上では自身のBlog『nobilog2』や、マイクロソフト(株)内のMac向け製品コーナー“mactopia”でコラム "Apple's Eye"を執筆している。


海外メーカーの参入が難しい日本の携帯電話市場

アップルに携帯電話機を出して欲しい――。これは世界中のアップルファンが常々思ってきたことだろう。私自身も初代iMacが発表された直後の1998年5月、同社の工業デザイン部門の副社長、ジョナサン・アイブにそういう計画がないのか問いかけたことがある。

振り返ってみると、アップル社は以前から“iPhone”の登録商標を行なうなど、携帯電話機の開発や事業参入に興味を示していた。2001年、デジタルライフスタイル戦略を発表したときも、携帯電話をこの戦略の重要な構成要素として挙げている。2005年9月には、iTunes Mobile内蔵の携帯電話機『ROKR(ロッカー)』を米モトローラ社に作らせた。

しかし、興味はあっても日本の携帯電話市場に参入するのは難しかったようだ。というのもアップルの製品はMacにしろ、iPodにしろ、グローバル展開が基本。ところが日本の日本の携帯電話業界は、世界中のほとんどの国が採用している“GSM”という携帯電話の通信方式が利用できなかったり、キャリアと密にやり取りしないと携帯電話機が作れなかったりと、世界から見ると特殊な存在だ。

アップルは携帯電話機を作れても、今のところノウハウのない電話サービスまで提供することは難しい。日本では携帯電話事業をグローバル展開できないと判断したのか、先のROKRも欧米圏だけで販売している。

こうした事情から、アップルがもし本腰を入れて日本の携帯電話市場に参入するなら、携帯キャリアと手を組むのが近道だ。では、日本において提携するならどのキャリアがベストかといえば、アップル同様にグローバルな企業である英ボーダフォン社しかないと考えていた。

ひとときボーダフォンは世界中の携帯電話を同じ端末で統一しようという画期的な戦略に打って出た。しかし、携帯電話端末の技術は日本のほうが進んでいる。この戦略は国内のボーダフォンのシェアをさらに狭める結果をもたらしてしまった。

そんな中、突然、降って湧いたように現れたのが、ソフトバンクによるボーダフォンの買収、そしてそれに続くアップルとソフトバンクの密談のウワサだ。ソフトバンクはこのウワサを否定しているが、長期的に見ると可能性は十分にあると思う。


企業体質が似たアップルとソフトバンク

ソフトバンクの代表取締役社長兼、ボーダフォン取締役社長である孫 正義氏。ソフトバンクは18日、10月1日前後にボーダフォンの社名を“ソフトバンクモバイル(株)”に変更することを発表している

筆者は今でもアップルと手を組むのにもっとも相応しいパートナーは、ボーダフォン改めソフトバンクモバイルだと思っている。過去に『MACPOWER』誌や『MacPeople』誌のコラムで何度か書いてきたが、アップルとソフトバンクは既成の枠にとらわれない革新者という点で似ている。従来の考え方はさておき、ベストだと思うことを貫く。

1999年、ソフトバンクが東京電力(株)やマイクロソフトらと組んで、インターネット事業会社のスピードネット(株)を立ち上げなければ、日本のブロードバンド時代到来は大幅に遅れていたかもしれない(もしかしたら来ていなかった可能性だってある)。

当時はNTT東日本/西日本がISDNを使ったダイアルアップこそ日本のインターネット接続のあるべき姿で、ISDNと干渉するADSLは日本では実現できないと言われていた時代だ。そこへ突如、NTTのインフラに頼らない定額常時接続サービスの開始が予告され、状況が一気に動いた。その後、ADSL時代の到来後も、Yahoo! BBがより安く、簡単なサービスとしてADSL普及に大きく貢献した。

一方アップルは、音楽作品に対してそれほど利権を持たないパソコンメーカーが自ら音楽販売に乗り出すという画期的な音楽配信サービス“iTunes Music Store”を立ち上げて、オンライン音楽販売の水門を一気に押し開いた。

頭をやわらかくしてあたりを見渡すと、世の中には「こうなっていれば便利なのに、なぜそれを選ばないのだろう」と思える製品やサービスが多い。作り手側の事情もあって、メーカーや開発者の声を耳にすることで「それじゃあ、仕方がないな」と思うことも多いが、そこで慣らされてしまっては大きな進歩は望めないだろう。

アップルやソフトバンク、米グーグル社といったいわゆる革新的企業に共通の強みは、「それじゃあ、どうしたらその問題を解決できるのか」を前提にものごとを推し進める点にあるのだ。




“Think different”を携帯電話でも

一般的に日本は「携帯電話が世界一進んでいる国」と言われている。確かに端末や通信速度、パケット定額サービスなどでは、世界の数歩先を行くが、その一方で前述のように携帯電話機を作る場合はキャリア側が主導で、メーカー側から革新をもたらすことは難しい。

ヘッドセット
車内で携帯電話機を持たずに会話できるBluetooth ヘッドセット

例えばキャリアが技術スペックを決めているから、キャリアが不要と思った技術はなかなか広がらない。パソコンとのファイルのやり取りや、ヘッドセットなどに使えるBluetooth技術などもそれほど重要視されてこなかった。

現状では“右向け右”で売れ筋と同じような携帯電話機が乱発され、ユーザーが真に革新的と感じるプロダクトが少なくなってきている。しかし世の中であきらめられていた分野に風穴を開け、世界を変えていく両社が手を組めば、ウワサに上がったiTunes携帯電話以外にも、さまざまな可能性が生まれてくるはずだ。


個人的にはメールだけでなく、インターネットから常時情報をとってきて表示してくれるアプリケーションを標準で備えた携帯電話機の登場を期待したい。W-CDMA系の携帯電話機だとパケットに対してコストがかかってしまうからかパケット定額制を導入していても、携帯電話端末の設計段階では常時接続を活用することにあまり積極的でない印象を受ける。今後はせっかくの常時接続をもっと生かしたサービスが登場してもいいだろう。

また、アップルとは直接関係ないが、これまで通話料の儲けをなくしてしまいかねないと携帯電話業界でタブー視されてきた定額IP電話の導入も望みたい。ソフトバンクモバイルの携帯電話機同士、あるいはソフトバンクモバイルの携帯電話機とYahoo! BBのIP電話間では通話料を定額にする、といったサービスなら十分考えられる。

IP電話は、仮に現行法にそれを妨げるものがあったり、ソフトバンク自身が抵抗勢力に気を配って、IP電話に直接的に取り組まなかったとしても、これまで日本では馴染みが薄かったスマートフォンなどを積極採用することで、間接的にこのブレークスルーをやってのける可能性が高い。実際、既にVoIPに対応したフィンランドのノキア社のスマートフォン“E”シリーズの開発がささやかれている。



“LISMO(au LISTEN MOBILE SERVICE)”は、パソコンに取り込んだ音楽ファイルを携帯電話に転送して持ち運べるという仕組みのこと

音声だけに限らず、アップルとからMacのリモートソフト『Apple Remote Desktop』などのソフトウェア技術を提供されれば、自宅の MacやWindowsを携帯電話から遠隔操作することも可能になる。これまでパソコン同士、あるいは携帯電話機同士でしか利用できず、なかなか応用が広まらなかったビデオ会議が携帯電話+パソコン間でつながる可能性も考えられる。

逆にiTunesブランドに依存した音楽再生機能付き携帯電話であれば、他のキャリアと組んで実施することも考えられる。例えばauの“LISMO”に対抗する形で、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモがiTunesモバイルにも対応するという形をとることも可能だろう。アップル+ソフトバンクに求めるのは、むしろそれ以外の携帯電話だ。

もちろんアップルやソフトバンクはまだ誰も思いついていないことをやってのけるからスゴイのであって、簡単に予想できれば苦労はしないのだが、われわれにより便利な携帯電話環境をもたらしてくれるかもしれない両社の提携の可能性に期待したい。




第3回は市場調査会社のIDC Japan(株)にて携帯電話の分野を担当するコミュニケーションズシニアマーケットアナリストの木村融人氏を予定。





(編集部 広田稔)





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